外来について Medical examination
治療法・病気について
脳外科で治せる「認知症」
「慢性硬膜下血腫」

本格的な高齢化社会が到来し、我々はいよいよ「認知症」に対する臨戦態勢をとらざるを得なくなってきました。認知症は一般に脳血管性の認知症(知らず知らずのうちに脳のあちこちの脳動脈が詰まって多発性脳梗塞の状態となり、もの忘れ症状がでてしまう)と、アルツハイマー病(日本よりも欧米に多<、原因不明であるが急激に脳が変性し、萎縮してしまう)の二つのタイプに分けられています。この二つの認知症は、残念ながら決定的な治療方針が見つかっていません。しかし、認知症の中には脳外科手術で治るものがあるのです。
それは『慢性硬膜下血腫』という病気です。

頭蓋骨の内側には硬膜という比較的硬い丈夫な膜があります。その硬膜とさらにその内側にある脳の間に、血が徐々に溜まるのが『慢性硬膜下血腫』です。しばしば軽い頭部外傷をきっかけとして、1〜2ヶ月後に症状が出てくることが多<、主な症状は
  1.急速に進む健忘症状
  2.頭が重い
  3.手足のしびれ・脱力

などです。

それでは、この病気の典型的な実例をご紹介しましょう。

ある晩、大酒飲みのAさんが、いつもの通りいい気分になって帰ってきました。少し度が過ぎたようで、玄関先で転び、軽く頭を打って、奥さんに抱えられ床につきました。翌朝Aさんは変わった様子もなく、ピンピンしていましたが、夫の大酒飲みに手を焼いていた心配性の奥さんは「これを機会に…」と考え、病院に連れて行きました。CT検査では特に異常はなく、「お酒はほどほどに…」というお医者さんのインパクトのない言葉に、Aさんは「それ見たことか、俺はまだまだいける!」と息巻き、奥さんはその逆効果にガッカリ…。そんな矢先、転んで頭をぶつけてからちょうど1ヶ月過ぎたある朝のこと、
 Aさん 「朝飯はまだか?」
 奥さん 「さっき食べたばかりでしょ・・・?」
 Aさん 「そんなことはない。もういい!頭が痛いから少し寝る。」
奥さんはその時「ついに来たか」と思ったそうです。アルコールによる精神症状と、ほとんど決めつけて病院に連れて行ったのです。ところが診断は「慢性硬膜下血腫」でした。「1ヶ月前の頭部打撲が引き金になって、徐々に血が溜まってきたのです。頭蓋骨に小さな穴を開け、生理食塩水で洗浄するだけで良くなりますよ。」との医者の言葉どおり、わずか30分の手術でAさんは回復し、4、5日で退院の運びとなりました。
この病気の進行は一般に緩やかですが、「単なるもの忘れだろう」などと放っておくと、けいれんを起こしたり、呼吸が止まったりして命とりにもなりかねません。
早期診断が大切です。