いつものことでも初めての出来事

2021/05/01 (土)

先日,マンションのエレベーターで降りたとき時のことです.
もう長く住んでいるので,乗ってから1階に着くまでの時間は体がなんとなく覚えています.
その日もスマホをみながらそろそろだろうと思って開いたドアから勢いよく出たら,乗ってきた中年の男性と思わずぶつかってしまいました.
慌ててお詫びしましたが,その方は申し訳なさそうにこう言いました「すみません,いつも私が乗るときこうなるんです」.
聞いてみると,マンションの下の階に住んでいるので,上の階から下りてくる人がもう1階かと思ってよく出て来てしまうそうです.
私にとって「初めての出来事」が,その方にとって「いつものこと」だったことに少し驚きました.

病院にいますと,毎日たくさんの患者さんの頭痛や脳卒中を診察しますので,私達にとってそういう病気のほとんどが「いつものこと」のように思えています.
もちろん,だからこそ冷静に対処できますし,それぞれに最善を尽くしますが,どこかで「慣れ」のような感覚が生まれているかもしれません.
一方,患者さんにしてみれば,こんな頭痛は経験がなかったとか,脳卒中になるなんて考えてもいなかったとか,きっと「初めての出来事」に驚いたり不安になったりしていることと思います.
病気という同じ出来事が,一方には「いつも」でも,もう一方には「初めて」かもしれないということを改めて感じながら,患者さんの心情に寄り添えるよう「いつものこと」にもしっかり対応していきたいと思っています.