上から目線

2022/07/23 (土)

1997年のことですが,国際学会でハンガリーのホテルに泊まった時,ちょっとびっくりしたことがありました.
フロントがフロアより少し高い造りになっていて,ホテルマンがあたかも「泊まらせてやっている」のような”上から目線”でチェックインに対応していたのです.
1989年にベルリンの壁は崩壊していましたが,共産圏の国家体制はまだあちこちに影を落としているようでした.

そんな閉鎖社会にありがちな”上から目線”は,威圧的な冷ややかさを浴びせつけます.
ただ,”上から目線”自体には,大切な作用も隠されていると思っています.
弱い立場に陥った時.もちろん隣に寄り添ってもらえれば気持ちが和らぐでしょう.
でも,もっと望ましいのは悩みの淵からその身を引き上げてもらうことです.
”上から目線”に引き寄せられて顔を上げれば,視界が開けて気持ちが前向きになれるかもしれません.
私の勝手な想像ですが,首の後ろには”ヤル気スイッチ”があって,見上げることでそれがオンになる…
そう思って,行き詰まった時は青空を”見上げる”ようにしています.

医師,教師,警察官はへりくだる気持ちが足りないとお叱りを受けることがありますが,それは仕事柄,少し上の立場から相手を救い上げる使命を優先しているせいかもしれません.
温かな”上から目線”で高い場所へ導いていく,そんな雰囲気を醸し出せるように目線にも気を配りながら診療していきたいと願っています.


追記:
このノートをアップロードしたら,高校同期で生徒会長だった友人から速効で貴重なコメントをもらえました.
「オンラインミーティングで、相手のカメラが自分を見下ろす位置にしているのを気にする人もいますね」
なんと,私もその1人です(笑).今のネットは5Gでもまだ「温かさ」を送信しにくいので,カメラが目の高さになるようにノートパソコンを台に上げてしゃべってます…