もの忘れは記憶の節約?

2024/06/02 (日)

人間の体は,何かが足りなくなるとどこかを節約して急場をしのぐ能力を持っています.
例えば,風邪をひくと食欲がおちる時があります.
それには体調の悪さも関係していますが,食べないことで胃や腸や肝臓への血流を「節約」して,そのぶん免疫細胞を活発化しようとする絶妙な調節能力の結果とも言えます.
限られたお小遣いを好きなことに使うために,何かを節約して工夫しているのにちょっと似てます.

脳にも同じことが起こります.
年齢に従って,体力も筋力も睡眠力も,そして記憶力も,どうしても少しずつ目減りします.
でも,家族の顔や大切な想い出なんかを忘れちゃっては大変だと脳もわかっています.
そこで,芸能人の名前とか,ちょっとした思いつきとか,それほど大事じゃないことは忘れるようにして記憶を「節約」しているんじゃないかと思っています.

患者さんもご家族も,「もの忘れ」が進んでいるかもしれないと診察の時によく心配されます.
でも,忘れているのがついさっきのことだったり,本人にとってそれほど重要じゃないことだったら,それは病気じゃなく,脳が記憶を「節約」してくれているおかげかもしれないと伝えしています.
一方,好きなことを考えたり,嬉しいことを想像して,脳をうまく使うと記憶力が回復すると言われています.
お小遣いが増えれば,節約の苦労も最小限ですみます.
楽しく暮らすことで,脳も節約がいらなくなって「もの忘れ」が減れば一石二鳥ですよね.

そんな風に考えながら.来週61歳になる自分の「もの忘れ」も,脳の「節約」のせいにしています(笑).